初めて女性とキスした夜|レズビアン主婦の私がシドニーで見つけた自分
私とわが初めて女性とキスをしたのは、21歳の春のこと。舞台はオーストラリアのシドニーでした。一本の青いシーグラスのペンダントとの出会いが、私の人生を大きく変える夜の始まりだったのです。
21歳、シドニーでの週末の過ごし方
当時、シドニーで働いていた私は、週末になるとフリーマーケット巡りに出かけるのが大好きでした。素敵な小物、こだわりの古着、ペイント、アクセサリー、フィッシュ&チップスなどの屋台グルメ、そしてビール片手の散歩(笑)—そうした雑多で自由な空気感に心が躍りました。
いつも半日をそこでブラブラして過ごし、街の活気を味わうのが習慣になっていたほど。そんなある日、家から徒歩20分ほど離れた、久しぶりのフリーマーケットへ一人で足を運ぶことにしたのです。
運命の出会い:青いシーグラスのペンダント
そこは別のフリーマーケットと比べると少し規模が小さく、落ち着いた雰囲気でした。人もパラパラという感じでしたが、その静けさが心地よかったのです。
いつものように入り口から順番にお店を見て回りながら、「あ、かわいい小物だな」「わ、おいしそう」「素敵」と、つぶやきながら歩いていました。私のいつもの買い方は、まず一周して好きなものに目星をつけ、二周目で購入するというもの。ところが、ある一件のお店のアクセサリーに目が釘付けになってしまったのです。
太陽の光が大きな青いシーグラスに反射して、私の目にキラキラと飛び込んできました。ネックレス、指輪、ブレスレット、アンクレットなど、何本ものシーグラスアクセサリーがキラキラと飾られていたのに、その中でも青いペンダントだけが群を抜いて輝いて見えたのです。
そのペンダントへ一直線に歩みを進めました。
500円玉ほどの大きさの濃紺のシーグラスに、ブロンズのワイヤーが繊細なアラベスク模様で絡み付いている。それを皮の紐でネックレスにしているものでした。太陽の光がなくても、深海のような奥行きのある青いシーグラス。アラベスクの美しい曲線を描くブロンズのワイヤーが、より高貴な仕上がりを演出していました。
「欲しい」—その瞬間、運命的な感覚に包まれました。
ペンダントの製作者、ミミとの出会い
ですが、買う前に、このペンダントの製作者さんに感想を伝えたくなりました。他のアクセサリーも素敵ですが、この一本だけが特に輝いていて、私の心を奪ったこと。そうした想いをお伝えしたかったのです。
このアクセサリーの製作者は、お店に立っていた一人の女性でした。ちょっと筋肉質でスラリと背が高く、短髪のとても格好いい女性です。格好は「戦うミシェル・ロドリゲス」のような、ピッタリしたタンクトップを二枚重ねにして、モスグリーンのカーゴパンツを合わせているような、美しいアクセサリーで装飾された、まるで戦う芸術品のような姿でした。
髪は短髪で濃い目の金茶色。ですが、その瞳はとても女性らしい、優しい茶色をしていました。カッコよさと繊細さが一つになった雰囲気は、彼女が作るアクセサリーの世界観にぴったり合致していました。
「うわ、カッコいい女性だな。話すのが少し照れちゃうな…」—そんな気持ちが生まれたのを、今でもはっきり覚えています。
つたない英語で、感想を伝えました。
「あそこの場所からね、このアクセサリーが輝いて見えたから、誘われるようにここに来たのよ。本当に素敵なペンダントですね」
「どうしてシーグラスアクセサリーのお店をやろうと思ったんですか?」「どこでこんなきれいなシーグラスを集めるんですか?」—彼女のカッコよさにドギマギしすぎて、どうでもいい質問ばかり繰り返してしまいました。今考えるとちょっと後悔しています(笑)。
言葉は拙くても、心は通じ合っていた
当時、オーストラリアに来てまだ3年ほどだった私の英語力は、正直なところ拙いものでした。泣きたくなるほど下手な英語でしたが、彼女は丁寧に答えてくれ、優しい笑顔を絶やしませんでした。
たまたまその時、他のお客さんがいなかったこともあり、私たちはかなり長く話をしました。30分以上はいたと思います。
彼女の方からも「どこから来たの?」「きれいな髪だね」「どこら辺に住んでいるの?」「学生?」など、興味を持って話しかけてくれました。
話せば話すほど、私は宝塚の男役の人と話しているような、芸能人と話しているような、自分とは次元の違う素敵な人と一緒にいるような緊張を感じていました。
でも、お店の邪魔になるわけにはいきません。後ろ髪を引かれつつも、その場を離れようとした時に、彼女が口を開きました。
初対面でのパーティーへの誘い
「今夜、ここの近くでパーティーがあるの。一緒に行かない?ドレスコードも何もないし、沢山の人が来るわ」
そう言って、彼女はお店のカードの裏に住所を書いてくれました。
「私と一緒に行くなら、20時ここで待ってる。遅れたらこの住所に来て。楽しみにしてる」
初対面でパーティーに誘われたのは初めてでした。いつもはそんな誘いには乗らないはずなのに、なぜか「もちろん行くわ!楽しみです!」と返事をして帰ってしまいました。
後で知ったのですが、彼女の名前はエルミニア、通称ミミ。カッコいい姿に似合わず(笑)、とても可愛い名前でした。スペイン系オーストラリア人だったのです。
オーストラリアにはLGBTQI向けのバーやクラブ、イベント文化もあり、自由に人が集まる夜の空気があります。背景を知りたい方は、オーストラリアのLGBTQI向けナイトライフとイベントも参考になります。
ホステルでの生活と「ジャパニーズルーム」
当時、私が住んでいたのはシドニーのタウンホール駅から徒歩20分ほどの場所にある、光熱費込みで月約2万円のホステルでした。トイレ風呂と大きなリビングは共有で、私の部屋にはキッチン付きリビングとベッドルームがありました。
ベッドルームには2段ベッドが2つある4人部屋で、男女混合です。ホステルなので、ベッドが空くと次々に旅行者が泊まりに来ます。私は色々な人との交流が好きだったので、帰国までずっとこのホステルに住み続けました。
私がずっと「この部屋の主」のように居座り続けていたので、後にこの部屋は「ジャパニーズルーム」と呼ばれるようになったほど(笑)。
このホステルは他のホステルと違って、長く住み続ける人が多く、隣町がゲイが多く住む地域だったこともあり、住人の半分以上がゲイでした。だから男性と一緒に寝泊まりしても安全だったんです(笑)。
パーティーへ向けて:何を着ていこう?
フリーマーケットから帰った私は、クローゼットを漁り、今夜どんな服を着ていこうか悩み始めました。アクセサリーのネックレスはもう決まっています—あの素敵な濃紺のシーグラスです。
胸元はアクセサリーのためにシンプルに?それとも、胸元を開けて素肌にシーグラスを合わせる?濃紺のシーグラスが映える白い服?スカートはロング?それとも短め?髪型は下ろす?それともアップ?
そんなことを考えていると、洋服がベッドに積み上がっていきました。
その時、同じホステルのチャイニーズオーストラリアン、ゲイのサムが部屋に入ってきたのです。
「ファッションショーして、デート?」
事情を説明すると、サムは急に騒ぎ出しました。
「ちょっと待って!そのパーティーの場所ら辺ってレズビアンが多く住むところよ!あらやだ!」
彼はすぐに自分の彼氏を呼びに去り、ゲイカップルが戻ってきました。
「きっとレズビアンよその人!絶対そうよ!とわは、いいの?ただのパーティーじゃないわよ~~~!」
初めて口にした「レズビアン」という言葉
「レズビアン」
それは、これまでの人生で口にしたことのない言葉でした。
彼女はレズビアン?
ですが、何故か違和感がありませんでした。むしろ、「ああ、そうだ。確かに彼女はレズビアンかも」と、当たり前のように受け入れていました。
嫌悪感も、騙された感もなく、ああ、やっぱりそうか。きっと心の奥底で気付いていたのだと思います。そして、それでも私はこのパーティーを楽しみにしていました。
ホステルは騒がしくなりました。ゲイカップルだらけになり、ワーホリで長く泊まっているイギリス人たちも興味津々で一緒に揶揄い始めました。
「女性同士ってどんなことするのかしらね」「きっと私たちゲイより激しいわよ」「女だらけの世界なんて怖いわよきっと」
ゲイたちもイギリス人たちも、揶揄うのが好きだし嫌味も大好きです。もう言いたい放題(笑)。
「とわ、タバコは吸っちゃダメよ」「危ないと思ったらすぐに帰るのよ」「食べ物も気をつけなさいよ!」—最初のドキドキワクワクから、不安のドキドキへ変わっていきました。
ですが、私は決めました。
行く!
夜20時の再会
決めた格好は、少し胸元が閉まった白のシャツに、青いペンダントと似た青い柄のインド綿の派手めのスカート。頑張りすぎず、まあまあかなと。
ホステルの住民たちに心配(というより、からかわれながら)送り出されました。いや、むしろ「レズビアンになって帰ってくるのか来ないのか」という賭けをされながら(笑)。
約束の20時の10分前には、例の場所へ。
「日本人ってホント律儀だよね。海外に来て何度も思う。約束通りに集まるのはいつも日本人だけ…だけ…だけ」—案の定、ミミは10分遅れで普通にやってきました。
大きく開いた胸元には、長さの違う何本ものシーグラスのアクセサリー。スラっとした筋肉質の二の腕には、ブロンズ色のアラベスクのアクセが、ギリシャ神話の女性戦士のようにカッコよく巻き付いていました。
そして、偶然にもミミが履いてきた緩やかなパンツは、私と同じインド綿の派手なものでした。
ミミは私の胸元の自分のシーグラスを見て喜んでくれ、お互いのスカートとパンツが派手めなインド綿という偶然に、一緒に笑いあいました。
「じゃ、行こう」
そう言ってミミは私の手をとり、当たり前のように繋いで歩き出したのです。
初めての手つなぎ:違和感なく、自然に
「何で手を繋ぐの?」「え、これって普通なの?」「えっ、どうしよう?」「は、離すに離せない。どうしよう~~~」
頭の中はこんな口に出せない言葉たちで埋め尽くされていました。
筋肉質でスレンダーなミミの手は、私より大きかったですが、やっぱり骨は女性で、華奢な感じがしました。冷たいけれど、少しシットリとした手。
パーティー会場までの5分ほどの間、ずっと手を繋いだままでした。こんなに長く手を繋いだのは、両親以外では初めてのことでした。
手を繋いでいることに意識を向けないよう、普通を装いながら歩きました。
女性だけの空間へ:レズビアンパーティーの世界
あるアパートメントの一室が、今夜のパーティー会場でした。部屋の扉は開いたままで、中からダンスミュージックが外に漏れていました。
中には多くの女性が気ままに踊っていました。密着している人もいれば、飲み物やタバコを片手に一人くるくる回っている人も。そして、独特の匂いがプンプン。テーブルに置かれているクッキーは危なそうなので、手は出してはダメだな。
そんなことを思いながら入室しました。誰も私たちを気に留めません。皆は自分たちだけの世界を楽しんでいました。
ミミは直ぐに私をダンスホールの隙間に連れていき、私の方を向いてユラユラと踊り出しました。美しい目が私を見ています。小さなミラーボールの光がミミの胸元の沢山のシーグラスを煌めかせています。
私は、なんだかもう既にミミを受け入れていました。当たり前のようにミミの前でダンスをし、当たり前のようにチークダンスでミミにぴったりと密着しました。
初めてのキス:官能と感動
そして、ミミは私にキスをした。
ミミの顔がゆっくりと、キスをするように近づいてきました。私はそれに応えるように顔をあげ、お互い目をつぶりました。
柔らかくも少し冷たい、瑞々しい唇が触れた。
私の前歯をミミの温かい舌がなぞります。私も応える?でもその前にミミの舌が戻っていき、キスが終わりました。
「なんだか、嫌じゃなかった」
でも、急に不安が襲ってきました。「私も舌を入れ返して答えなかったから、ミミが悲しい思いをしてないか?」「キスがヘタで嫌われた?」「キスしたらこの人じゃないなって思われた?」
急にそんな不安に襲われ、私はすがるようにミミを見ました。
彼女は微笑んで私を見て、抱き寄せてくれました。彼女の肌の匂いは、やっぱり女性らしい柔らかい匂いで。肌の感触も、やっぱり女性らしい滑らかさで。
キスは瑞々しい果物のようで。
「官能」—そんな感情でした。
私の世界が変わった夜
告白なんてされてない。手を繋ぎ、抱きしめられ、キスをした。ただ、それだけだったのに、急激に私の世界が変わった気がしました。
まるでシンデレラ?ロミオとジュリエット?この時間が永遠に続けばいいのにと思ったのは、あの時が初めてでした。
ダンスホールの端のソファーには、沢山のレズビアンカップルたちが愛を語り合うように座っていました。私たちも深く沈むソファーに座り、この女性だけの楽園を楽しみました。
次会う約束を交わします。そして、ミミにグッと抱きしめられ、フレンチキスをされた後、私は帰宅しました。
ホステルでの大歓迎:「この世界へようこそ」
ホステルの出入口の横にある大きなリビングルームでは、みんなが酒を飲みながらテレビでフットボールを見て、私を待っていたようです。
結果を聞いて、喜ぶ奴、悔しがる奴。まったくもう。サム達カップルは何故か大喜びでキャッキャッしているし、おっさんカップルには「ようこそ、この世界へ」なんて言われたり。
そんな歓迎がくすぐったいような、本当に新たな世界が開けたような、不思議な感覚でした。
これが、私とミミの出会い
初めて女性とキスをしたあの夜から、私の人生は大きく変わりました。シドニーでのミミとの日々、そして帰国後に現在のパートナー千恵とどうやって出会い、レズビアン主婦同士として隠れながら愛し合っているのか—そうした私たちのストーリーを、このブログではこれからずっと綴っていきたいと思います。
セクシュアリティについて悩んでいる方も、すでに自分がレズビアンだとわかっている方も、パートナーとの関係について考えている方も、きっと何か感じるものがあるはずです。
私とわの人生は、派手ではないかもしれません。隠れながら、時には葛藤しながら歩んでいます。ですが、それでも「私たちには愛がある」—そう言い切れます。
これからも、よろしくお付き合いください。(^▽^)
レズビアン主婦の私から、今悩んでいるあなたへ
これが、私が初めて女性を好きになり、初めて女性とキスをした夜の話です。
このあと私は、シドニーでの恋を経て、帰国後に今のパートナー千恵と出会いました。今はレズビアン主婦として、葛藤も抱えながら、それでも大切な人と愛を育てています。
もし今、あなたが「自分はレズビアンかもしれない」「女性を好きになる気持ちがわからなくて怖い」と感じているなら、焦らなくて大丈夫です。答えは、急いで出さなくてもいい。あの日の私みたいに、ある日ふいに、自分の心が先に教えてくれることもあります。
カミングアウトを無理にしなくてもいいと思えない時は、カミングアウトしないでもOK!レズビアンが自分らしさを表現する5つのヒントも読んでみてください。
また、これから誰かと出会いたい方は、レズビアンの出会いアプリおすすめ3選|安全な選び方と始め方、将来一緒に暮らすことまで想像している方は、同性カップルの同棲・賃貸|断られた時の対処7選+準備チェックリストもあわせてどうぞ。
これからも、私とわの物語を、少しずつ書いていきます。


